第1章 労働における外部不経済

目次

2つの過ち
不幸の連鎖
労働市場におけるピグー税
人材派遣会社と随意契約
市場原理と自然淘汰
ベーシック・インカム、リカレント教育と創業支援

2つの過ち

「雇用の流動化」を唱えた竹中平蔵氏は、パソナという人材派遣会社の会長になった。かつて様々な大臣を務め、2021年の現在も 成長戦略会議 の委員である竹中氏は、政府の経済政策に受益企業として影響を与えることが出来る。政府や地方公共団体は随意契約により、大手の派遣会社に仕事を与え、雇用対策に使われるはずの税金が無駄になる。竹中氏が無能とは思わない。汚職にまみれているとも思わない。だが、竹中氏が大臣として在任中に2つの失策があり、それが問題の元凶となっている。

1つ目は、市場原理に逆らったこと。自然の摂理に抗うことは何人も出来ない。 大企業が潰れそうになると、産業再生機構により倒産を防いだが、市場原理による「企業の自然淘汰」が働かず、ゾンビのように市場の独占や寡占は維持され、益々ひどくなり、日銀やGPIFによる株価の買い支えは、株式市場の資産バブル増加を招いた。本来、新規産業を担うはずの個人への創業支援や、ベンチャー企業への資金調達支援は遅々として進まない。

2つ目は、1つ目とも関連があるが、「雇用の流動化」を唱え、労働者派遣法の改正と称し、立場の弱い労働者の権利を奪ったことだ。 企業の自然淘汰が進めば、自然に転職が進む。しかし、竹中氏のしたことは、企業の正社員削減やアウトソーシングを正当化し、弱者に負担を押し付け、人材派遣会社を優遇したことだ。[1]テレビのコマーシャルで派遣会社の広告を目にしない日はない。