技術の独占や寡占

Lockinにより、企業は成長し、資金と技術を蓄える。やがて彼等は資金力で企業買収に終始するようになる。それらが新規参入を阻み、価格競争に終始し、やがて技術開発は停滞する。アメリカの創業間もない企業は、開発資金の安く済むソフトウェア産業へ目を向け、インターネットの興隆と共に、世界企業へと成長した。創業時において、安く手に入る開発基盤は重要だ。オープンソースの考え方は、ソフトウェアに留まらず、製造業にも広まっている。オープン・アーキテクチャやオープン・イノベーションだ。

遺伝子組み換えは、かつては莫大な費用と設備が必要だったが、今では趣味で行う人々がいる。GitHub等でオープンソース・ソフトウェアや文書が共同開発されている。CADデータはネットで公開され、3Dプリンターの普及により、誰もが製造業に参入できる。半導体回路はプログラミングで設計できる時代だ。Cheminformaticsで製薬に参加できたりdrug repositioningが出来る。世界中の人々が共同開発し、公開し、技術や知恵や芸術を披露しあっている。

日銀による株価の買い支えは、独占や寡占を助長するだけだ。アメリカのS&P 500は、ずっと右肩上がりで成長しているように見えるが、その構成銘柄は頻繁に入れ替えられている。日経平均よりもずっと頻繁に行われているのだ。バフェット氏は、この点に気づいているのか知らないが、孫正義氏が気づいているとは思えない。時代により、産業構造は変化する。無理やり企業を延命しても無駄だ。泥舟は沈み行くのだから、さっさと舟を乗り換えれば良い。世界恐慌を経験した投資家は殆んどいないだろうから、楽観主義者に追随するのは危険だ。

竹中平蔵氏は優秀かも知れない。だが、彼が大臣の在任中、2つの失策を犯した。1つ目は、「雇用の流動化」を掲げ、非正規雇用を増やし、生活の不安定な人々を増やしたことだ。2つ目は、産業再生機構により、幾つもの大企業を救ったことだ。たとえ大銀行であろうと、政府が市場原理に背いて彼等を救ってはならなかったのだ。我々にとって必要なのは、「雇用の流動化」ではなく、「企業の自然淘汰」と、新規産業の育成であったのだ。特にソフトウェアやインターネットの分野で、日本はアメリカ合衆国に大きく溝を開けられた。日本は、あまりにも会社設立の手間がかかりすぎる。資金調達も容易ではない。何よりも、プログラミングが、どんなものなのか知らない人々が多い。無能者ほど人を馬鹿にしたがる。彼等は何も知らない、調べない、尋ねない、そして知ろうともしない。今後も、ますます溝を開けられるだろう。そして彼等はやがて世界から置いて行かれるだろう。