困難な時代には、困難を乗り越えた歴史に学ぶのが早道だ。天明の大飢饉は、農村部から都市部への流入を招き、治安が悪化した。鬼平として知られる長谷川平蔵は、火付盗賊改方として凶悪犯罪を取り締まると共に、この江戸期の失業対策として人足寄場を開いた。失業者に職業訓練を施したのだ。養育院を設立した渋沢栄一も同様の活動をしている。犯罪を未然に防ぐことは重要だ。犯罪の原因の多くは貧困や生活苦だ。今、basic income導入がダボス会議以後、議論されているが、反対者が多い。もし、単に金を配るのではなく、長谷川平蔵の行ったように、職業訓練と創業資金提供の併用であれば、反対も少なくなるのではないか。
既存の企業に就職を目指すと、椅子取りゲームとなり、地位の奪い合いとなる。長谷川平蔵の政策のように、創業に必要な知識や技能を身につける支援が必要だ。リカレント教育は必要だが、学習費用がかかる。無職にある者に負担を強いることは出来ない。だが、無料の職業訓練施設は維持が難しい。それを解決するには、企業にスポンサーになってもらい、例えば、プログラミング教育を受講した者の成績優秀者を、有給の企業実習生とすればよい。インターンシップは新卒のみならず、就職活動に失敗した職歴のない者にも必要だ。また、無料のスタートアップ施設を増やすことも忘れてはならない。
Covid-19によるパンデミックで、世界は改めてbasic incomeの重要性を認識させられるだろう。我が国では、一人あたり10万円の特別定額給付金が支払われる。これを恒久的な制度とすべきで、生活保護や年金をまとめた一つの支援制度とすべきだ。
政府や地方自治体が新規産業を興したり、誘致することも出来る。マリアナ・マッツカート氏は国家主導の技術革新を説いている。私は、中小企業基盤整備機構の地域中小企業応援ファンドを拡大させた、地方自治体単位での投資ファンド設立を提案する。上場投資信託にすれば、潤沢な資金を得ることが出来るだろう。例えば、アメリカ合衆国の民主党左派の主張する通り、グリーン・ニューディールに倣い、環境産業を誘致したいとする。power2gasやリサイクルの技術を持った企業や研究機関を招き、雇用を生み、企業間の技術提携を進ませる。一度拠点が出来てしまえば、放っておいても企業が集まる。比較優位を人為的に生み出すのだ。